女騎士は第四王子のせいで頭が痛い

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 リーヌスはフェリサに負けず劣らず大きく目をみはったあと、眉をひそめた。 「……あのねえフェリサ、腹のなかでとか陰口くらいなら僕もうるさく言わないけれど、いくらなんでも面と向かってぼんくら王子はないだろう?」  だが、いまのフェリサには怖いものなど何もない。 「ぼんくらだからぼんくらって言ったんです! どうしてくれるんですか、これじゃわたしは誘拐犯じゃないですか!! 王宮の宝物を盗んだほうがまだましです、こんな売れもしないし役にも立たないぼんくらをつかまされて、あげくに犯罪者としてこそこそ隠れつづけなきゃいけないなんて――」  地味に目立たずひっそりと生きていける堅い勤めと年金のため、騎士養成校にもぐりこみ、狙いすました中程度の成績で試験をくぐりぬけた、これまでの努力はなんだったのか。  人生計画がすっかり台無しになってしまった。  フェリサのつぶらな茶色の目から、自然と涙がぽろぽろあふれだす。   「王位になんて絶対つけない冷や飯食らいのぼんくら王子付になって、これで安心だと思っていたのに……なのに……ひどい……ひどすぎる……」  リーヌスの眉尻が下がり、無駄に端整な顔が世にも情けない表情になる。 「ぼんくらぼんくらって、何もそこまで連発しなくても……」
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