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「この世の終わりが来るまで連発したって足りません! 最っ低のぼんくら王子が!!」
フェリサはぐいと涙を拭うと、傍らにていねいに置かれていた愛剣をつかんだ。
リーヌスがうれしそうな声をあげる。
「あ、甲板に出るの?」
たとえ素手でもこんなぼんくらに負けることはない、と計算できるだけの理性は残っていた。
剣を抜くことだけは我慢して、フェリサは寸分の乱れもない動きでリーヌスに鞘のこじりをつきつけた。
「一緒に王宮まで戻ってもらいます。そしてわたしの潔白を証明していただきます」
「そんな! フェリサ、お願いだから少し僕の身にもなってくれ。この前の見合いに失敗したことは、きみだって知っているじゃないか」
「ええ、知ってますよ。ぼんくらがぼんくららしく『政略結婚ですが安心してください、僕は高望みしないので』なんて言い出すところは見てましたから」
「僕は正直に言っただけだよ。でもあれでついに、父上と兄上を怒らせてしまっただろう? それでもう一生こづかいなしの飼い殺しだと言われたんだよ。かわいそうじゃ――」
「いいえまっっったく」
フェリサは間髪を入れず、斬って捨てるが如くに否定した。
リーヌスはめげずにさらに訴えようとしたが、きれいに無視して質問する。
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