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「そんなことより、この船はどこまで行くんですか?」
鞘のこじりにというよりフェリサの冷たい視線に恐れをなしたように、リーヌスがしぶしぶ答える。
「昨日の居酒屋で会った人が、この船の船長なんだ。指輪を渡して、プラシッドの港まで乗せてもらえることになったよ」
フェリサの眉がぴくりとした。
プラシッドといえば、西の国境がすぐそこだ。見合いでは気の利いた台詞ひとつも言えないぼんくら王子のくせに、こういうときは無駄な交渉力を発揮する。
「じゃあ、昨日は最初からこうすることを企んで、わたしを連れ出したんですね……?」
飲みものを勧めてきたこと、いくらなんでも急激に眠くなりすぎたこと、そしてふっつり記憶が途切れたこと、すべてがつながる。
「あの水に何を仕込んだんですか!?」
さらに迫った鞘のこじりに、リーヌスはあわてて両手で喉もとをかばった。
「大丈夫、安心して、フェリサ。先に僕自身で試してみたんだ。急に眠くなるだけで、特に害はなかったよ」
こんなに大丈夫そうに思えない「大丈夫」もない。
フェリサは噛みつきそうな勢いでくりかえす。
「何を仕込んだのかを聞いてるんです!」
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