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船はようやくプラシッドの港に入った。
「さ、兵舎まできりきり歩いてくださいよ。いやがるなら首に縄をつけてひきずっていきますからね」
「冗談に聞こえないよ、フェリサ……」
「でしょうね、冗談ではありませんので」
薄暗い船室を出て甲板にむかう。
海面に反射する陽光でまばゆいばかりの甲板は、質素な仕事着の船乗りと旅装の旅人があわただしく行き交っている。
と、港へのタラップから、場違いな厳めしい一団が乗りこんできた。
驚く船乗りと旅人を、手早く追いはらっていく。
「あれは!」
フェリサははずんだ声をあげた。
先頭に立つ男のかっちりした立て襟の制服は、フェリサと同じ王家直属の王宮騎士のものだ。
リーヌスが残してきた書き置きを見つけて、すぐに可能性がありそうな場所へ早馬を飛ばしてきたに違いない。
うめくリーヌスをきれいに無視して、フェリサは彼らに手を振った。
「ここです!」
すぐに気づいてこちらにむかってきた騎士の顔に、フェリサはおもわず頬をゆるめた。
騎士養成校の同期、フェリシアンだった。
伯爵家の生まれで文武両道の優等生だった彼と、庶民の生まれで何もかも中程度の成績だったフェリサは、ほぼ交流はない。
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