28、衝動的な逃避行

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「う、うん――」   『今、どこにおるの?』 「――京都」 『え?……そのアナウンス、駅?』 「……うん」 『ちょ、ちょっと待って……』  電話の向こうで雅煕が誰かとやり取りする声が聞こえる。 『ごめん、もう大丈夫。今、京都駅におんねんな?』 「う……うん……お願いが……あって……」 『何があったん? 杏樹? 俺、今、京都の北の端っこにおんねん。京都駅とちょうど反対方向で……杏樹、そこからタクシー乗れる?』 「う……たぶん」 『じゃあ、烏丸(からすま)口から出て――』 「カラス?……八条口って書いてある」 『そっち出たらあかん! 駅の北側に出て! バスターミナルがあって、タクシー乗り場もあるから』  スマホからの指示に従い、杏樹は方向を変え、烏丸中央口から改札を出る。想像した京都とは違う近代的なビル群を見上げ、しばし立ち止まった。――駅の正面には、白い京都タワーが聳える。 『雨降ってるけど、タクシー乗り場わかる?』 「うん」 『じゃあ、御池(おいけ)のサクラホテルって言えばいい。ロビーで待ってて。なるはやで俺も行くから』 「ん……」 『杏樹!』 「何?」
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