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「う、うん――」
『今、どこにおるの?』
「――京都」
『え?……そのアナウンス、駅?』
「……うん」
『ちょ、ちょっと待って……』
電話の向こうで雅煕が誰かとやり取りする声が聞こえる。
『ごめん、もう大丈夫。今、京都駅におんねんな?』
「う……うん……お願いが……あって……」
『何があったん? 杏樹? 俺、今、京都の北の端っこにおんねん。京都駅とちょうど反対方向で……杏樹、そこからタクシー乗れる?』
「う……たぶん」
『じゃあ、烏丸口から出て――』
「カラス?……八条口って書いてある」
『そっち出たらあかん! 駅の北側に出て! バスターミナルがあって、タクシー乗り場もあるから』
スマホからの指示に従い、杏樹は方向を変え、烏丸中央口から改札を出る。想像した京都とは違う近代的なビル群を見上げ、しばし立ち止まった。――駅の正面には、白い京都タワーが聳える。
『雨降ってるけど、タクシー乗り場わかる?』
「うん」
『じゃあ、御池のサクラホテルって言えばいい。ロビーで待ってて。なるはやで俺も行くから』
「ん……」
『杏樹!』
「何?」
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