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（空港から連絡したのに繋がらなかったけど、日本でちゃんと打ち合わせてるから大丈夫よね？ やっぱり飛行機が遅れちゃったから……？ いきなり来ることになっちゃったけど……）
チン！ とベルの音とともにエレベーターが止まり、二重扉の内側が自動で開く。杏樹は外側の、金網の扉をえいやと押し開け、日本では見たこともないほどの段差を乗り越えて、スーツケースを引っ張り出す。
白い壁に市松模様のタイル敷の、クラシカルな内装。外国映画のようなおしゃれな共用廊下を通って健司の部屋のドアの前に辿りつき、大きく深呼吸をしてから呼び鈴を押す。
（ごめんね、飛行機遅れて、空港で何度も電話かけたんだけど！……うーん、責める感じになっちゃわない方がいいかな？ それより、朝早くの突然の訪問を謝るべき？）
呼び鈴を押してからも、あれこれ考えてしまうが、住人の反応はない。
（まだ寝てるの？ でも、昨夜来るはずのわたしが来なかったんだからさ……もうちょっと……）
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