14、行列のできる高級ブランド店

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「ありがとう。君は優しいし、めっちゃいい子や。……一生に一回だけでも、こんな可愛い子の処女もらって、俺は世界一の果報者や」 「え、一回だけなの? もうしないの?」  杏樹の素朴な質問に、髪を撫でていた桜井の手が止まる。 「え。またさせてくれんの? お礼に一回だけやなくて? こんな俺みたいなんと?」 「お礼じゃないって言ってるのに! パリにいる間だけでも恋人になりたかったからなのに!」        杏樹が不満そうに唇を尖らせると、桜井はガバッと起き上がって杏樹の上に覆いかぶさる。 「もしや君は地上に降りた本物の天使(アンジュ)……」 「急になんなの!」 「え、マジで、今夜もさせてくれんの? ていうかやね、パリにいる間だけとか、今夜とか、しけたこと言わんと今すぐもっかいしたい!」 「え、今? それはちょっと……」   それは困ると言う前に彼の唇に言葉を封じられる。男性の大きくて硬い身体の重みに杏樹が圧倒された時。枕元のスマホが黒電話のようなけたたましい音を立てる。  桜井が跳ね起き、「なんやねん、こんな時間に!」と悪態をつきながらスマホを確認し、眉間に深い皺を寄せる。
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