14、行列のできる高級ブランド店

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「――もしもし? お母さん?」  杏樹もぎょっとして無意識にシーツをかき寄せる。――このタイミングで母親? 「何? こんな時間に? まだこっちは朝の六時よ? そっちは昼? 知らんがな」  それからスマホを耳に当て、はい、はい、それで? と頷いて話を聞いてから、関西弁で答える。 「え? 僕がそれ、取りに行くん? そらパリやけど――本店てどこ? シャンゼリゼ? ああ、思い出した、前に連れてかれたとこやね? はい、今日か――今日行けるなら今日行ってしまうわ。うん、他は買わんでええの? 僕わからへんから、お店の人にそっちから言うといて。今はまだ朝の六時やから、電話しても出ぇへんで。時差を考えて電話しぃや、迷惑やから。うん、うん、わかったから。はい、ほな切りますよ? はい――」  スマホをプチッと聞いて、ため息をつく。 「……お母さん?」 「せやねん。なんや知らんけど、限定品のバッグを注文してるから取りに行ってこいとか、息子を宅配便くらいに思ってはるわ……」   「……雅煕さんのおうち、すごいセレブなんですね? パリのお店に直接注文なんて!」
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