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15、VIPルームとマジックテープ財布
バーゲンセール会場のように込み合う一般フロアを通り抜け、エレベーターに乗って、上階のVIP用のサロンに案内される。嘘のように静かで、贅沢な空間。ふかふかのソファを勧められ、フランス人スタッフがコーヒーを運んでくる。二人を案内してきた日本人スタッフがテーブルに並ぶ品を指し示し、言った。
「桜井の奥様にご注文いただいた品はこちらでございまして。……本店限定品のクラッチバッグと、キーケースです」
それを一瞥して、桜井が頷く。
「ん。……あと、彼女が財布を失くしてしもうてん。一つ買えるかな」
「こちらのお連れ様のでございますね。どういったお財布がお好みでしょう。長財布、二つ折り財布……」
「えっと、長財布で……」
日本人スタッフがフランス人スタッフに告げれば、商品を探しに部屋を出て行く。
待つ間にコーヒーをいただきながら、杏樹がしみじみ言う。
「……雅煕さんのおうち、本当にセレブなのね?」
「セレブの範囲がよくわからへんけど……まあ、無駄な金はあるな」
商品を包装しながら、日本人スタッフが言った。
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