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「美奈ちゃん、少なくともママは不倫してわたしを産んだんじゃなくて、わたしを妊娠中に不倫されて離婚してるの。誤解を招くようなことを言うなら、ママの弁護士に対応してもらうわよ」
杏樹が冷静に言い返せば、美奈子は露骨にムッとして、もともとあまり大きくない、人工的な二重の目をさらに見開いた。
「とにかく、あんたは我が北川家の恥なのよ。少しは身を慎んだらどうなのよ。ちょっとぐらい顔が可愛いからってチヤホヤされて、いい気になるんじゃないわよ!」
得意げにまくしたてる美奈子と健司を黙って観察していた桜井が、杏樹の耳元で尋ねる。
「……これが、例のイトコ?」
「うん……正確にはハトコなんだけど……」
桜井が杏樹と美奈子を見比べ、納得したように頷いた。
「あー、これはー、イトコさんの気持ちわかるわー。こらあ、やりきれへんやろな」
え? と思わず見上げる杏樹の顔を見てにっこり笑い、それから美奈子を見て、眼鏡の奥の切れ長の目を眇める。
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