16、杏樹の事情

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16、杏樹の事情

 美奈子と健司から離れて、杏樹はホッと息をつく。 「ごめんなさい……恥ずかしいとこ見せて」  「君は一方的に絡まれてる風だったし、恥ずかしいのはあっちや」 「でも……」  祖母や母のことを扱き下ろされるのが、杏樹にはもっとも辛い。   「……お母さんは生きてはったんやな。いや、連絡する相手がお祖母ちゃんやったさかい、もしかしてご両親は亡くならはったのかなと、思っていたんやけど」  手を繋いで歩きながら、桜井が遠慮がちに言うのに、杏樹が首を振った。 「あ……うん。生きてはいる。ママはアメリカにいて……父親は、会ったことないけど、死んではいないはず。……ママはその……女優なの」  「……女優……」
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