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「それはたぶん、美人女優の君のママに嫉妬してるだけや。女優が恥ずかしいっていつの時代の価値観やねん。女優業は稀有な才能の必要な仕事であり、芸術家や。今度言われたら、江戸時代に帰れやって、言い返したれ!」
「ん……」
頷く杏樹に桜井がさらに言った。
「不倫の挙句に云々も、本人やなくて、境遇を選べない孫を責めるのはお門違いや。古臭いこと言ってるわりに、イトコはアバズレみたいなファッションやし、わけわからへんな」
桜井が杏樹の生まれを非難しないことで、杏樹はホッとする。同時に美奈子の服装を思いうかべ、眉を顰めた。
「……あんな短いスカート履いてる人、パリにいないもんね?」
「そもそも寒そうや。男は男で白い饅頭の着ぐるみかと思うたわ」
「白い饅頭……」
健司の白いダウンを思い出して、杏樹がプッと噴き出す。
「健司のパパと美奈ちゃんのパパがお友達で、昔からの知り合いなんだけど……前はオシャレでカッコイイと思ってたけど、今見たら確かにお饅頭!」
「……でも、あれが好きやったんやろ?」
「うん……」
杏樹が俯く。
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