16、杏樹の事情

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 無自覚に柔らかい胸をぎゅうぎゅう押し付けられて、桜井は困惑しているが、嫌ではないのでやめろとは言いにくいのだが、杏樹は全く気付いていない。 「今夜はどうする?」 「夕ご飯? 昨日ご馳走だったから、適当でいいですよ?」   「せやな……レバノン料理とかしよか。こっちでは人気なんや」 「レバノン料理! 美味しそう! ……でも、レバノンてなに?」 「……国の名前や。もしかして知らんのか?」  「はい、初めて聞きました!」 「そんなアホな!」   世界地理をまったく理解していない杏樹に、桜井が思わずガクッと膝を折った。
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