17、祖母バレ*

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 聞こえてきたのは日本語の、女性の声。桜井が戸惑ったように問いかける。 「え? もしもし?……どなたですか?」  『……もしもし、北川杏樹の祖母ですけれど……ここは、孫娘の部屋では? あなたはこの前の……』        桜井の頬がひきつる。――何しろ二人はまだ繋がったままで―― 「あ、あの……えっと……その、これは――」 『ええと……サクライさん、と仰ったわね? そこに、杏樹もいますの?』  そっと、杏樹のなかから抜け出して、時計を確認する。深夜の十二時前。――杏樹の祖母は当然、東京とパリの時差を認識してかけているだろう。こんな時刻に男が部屋にいる意味に、当然、気づくに違いない。 「えっと……います、けど……」    快楽の余韻でぐったりとベッドに身を横たえた杏樹に、祖母との電話に出る余裕などあるとは思えなかった。 『代わっていただける?』 「あー、いえ、その――」 『それとも、出られないような状態ですの?』 「そ、そういう……わけでは……」  しどろもどろになる桜井に、電話の向こうの祖母が冷酷な口調で告げた。 『代わってください。どういうことかは、孫から聞きますわ』
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