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シーツを手繰り寄せて胸を覆い、ようやく裸の身を起こした杏樹が、桜井に問いかける。
「雅煕さん……? 誰?」
「……き、君のおばあちゃん。出られる?」
「お、……おばあちゃま?」
震える手で受話器を受け取り、耳に当てる。
「お、おばあちゃま? どうしたの?」
『そこに、サクライさんと二人でいるのね。……そちらはもう、遅いでしょう?』
「うん……」
電話の向こうで、祖母が深いため息をついた。
『……本当に、一人で旅行なんて許すんじゃなかったわ……』
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