19、近づく別れ

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「ううん? 全然、いいよ? 行きはビジネスだったけど、一人で退屈だったもん」  「そっか。それならよかった」    素直な反応に、桜井が杏樹の指に指を絡め、力を込めて握り直した。     ルーブルからサン・トノレ通りを手を繋いで歩いて、桜井が一軒の店を指した。 「ずっとそのメッセンジャーバッグ使(つこ)てるけど、飛行機に乗るには小さいやろ。一個買うた方がいいと思うねん」 「え、でも――」        遠慮する杏樹に、桜井が微かに眉を顰めた。 「今さら遠慮してんのは、なんか理由があるん?」 「り、理由? そんなのは……ただ、申し訳ないから……」  俯く杏樹の顎に手をかけて顔を上げさせて目線を合わせ、桜井が言う。 「俺が買って、贈りたいの。……嫌?」   杏樹が慌てて首を振る。 「嫌だなんてそんな!」 「俺、あんまりセンス自信ないし、ブランドとかよう知らんのやけど、あの店……なんか由緒ありげやん? 有名?」 「う、うん……わりと、有名じゃないかな? 日本のデパートにも入ってるよ? カッコイイよね?」  「ほな、入るで?」
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