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カランカラン……ドアベルの音とともに、ヘリンボーン模様が特徴的な商品が並ぶ店内に足を踏み入れる。
「あのトート! あれくらいの大きさがあったら、通学にも使えそう!」
「なら、あれにする?」
桜井が店員と交渉し、清算時に例の黄緑色のマジックテープ財布から黒いカードを出すと、店員の表情が変わる。ショッパーを抱えて、夕食を摂る店を物色し、一見、魚屋のようだが店内で牡蠣や雲丹とワインを飲める小さなオイスターバーを見つけた。
「フランス人も生牡蠣食べるの?」
「いや、むしろ生でしか喰わへんらしいで? 杏樹は牡蠣大丈夫?」
「うん、大好き!」
レモンを絞ってツルリと食べる牡蠣は、アッサリしていくらでも食べられそう。白ワインとの相性も最高。生雲丹、エビ、貝……魚介を堪能した後は、別のカフェに移動してパスタを食べ、デザートにクリームブリュレを注文した。
「杏樹は……その、大学では何を勉強してんの?」
「え……わたし? 保育科」
「……子供が好きなんや?」
「別に? 嫌いでもないけど、特に好きでもない」
杏樹の答えに、桜井が怪訝な顔をする。
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