19、近づく別れ

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「だって保育士になる学科やろ?」 「保育士と幼稚園教諭と両方取れるけど……別になりたいわけじゃないし、一般企業に就職する人も多いよ?」 「じゃあ、なんで、保育科?」  杏樹がクリームブリュレをスプーンで混ぜながら上目遣いに桜井を見る。     「……んーと、高校からエスカレーター式に上がる時に、成績が輪切りなのね。一番成績のいい子が英文科で、次が国文科……みたいな。もちろん。希望は聞かれるけど……」 「成績かい」 「……うーん、まあ。ピアノの授業もあるし、大学行ければなんでもいいかなって。……なんでそんなの、聞くの?」  逆に聞かれて、桜井が慌てる。 「え、だって……そういや、大学で何をしてんのかなって。……その、することしてんのに、普段のこと何も知らんのおかしいやん?」 「……そうかな?」  「そうかなって……将来、どうすんのかなとか……」 「将来? 誰の?」 「だ、誰のって……」  不思議そうに首を傾げた杏樹に、桜井はそれ以上、何も言えなかった。
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