21、羽田の別れ*

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21、羽田の別れ*

 白い身体を仰け反らせて絶頂した杏樹が、がくりと弛緩してベッドに横たわる。  桜井は顔を上げ、手の甲で口元を拭いながら、ぐったりとして荒い息をはいている杏樹を見下ろした。 「可愛い……杏樹……なあ、俺のこと、好き?」   桜井の言葉に、杏樹が視線を動かして潤んだ瞳で桜井を見上げる。   「うん……好きよ。好きじゃなかったら、こんなことしない」 「俺も、杏樹が好きや……可愛くてしょうがないし、離れたくない」  杏樹が右手を持ち上げて、桜井の頬に触れる。 「でも俺、二十日に博士論文の口頭試問があるさかい、絶対に京都に帰らなあかん」  「ん……」  杏樹にはハクシロンブンのコートーシモンがなんだかわからなかったが、それが大事なものなのだろうと思い、頷いた。 「……なあ、杏樹、お願いがあんねん」 「なに?」    桜井が杏樹のすりむいた膝――もう、かさぶたができて、傷は治りかけている――に軽くキスをすると、言った。 「……自慰(オナニー)してるとこ、見せて?」 「え?」  思わず桜井の顔をじっと見る。眼鏡を外し、完璧な美貌を取り戻した顔で何を言うの、この人は。
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