22、祖父と祖母の因縁

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22、祖父と祖母の因縁

 三月の末、京都。  三条木屋町(きやまち)の雑居ビルの上層階、鴨川を見下ろす小さなワインバー。カウンター席とテーブル席が三つだけの、こじんまりとした店に、桜井雅煕(まさひろ)は博士の学位取得のお祝いだからと、兄・幸煕(ゆきひろ)に呼び出されていた。  普段から客も少ないこの店、兄と雅煕を迎えたら、店主はドアに貸し切りの札を下げてしまった。つまり、店には今、桜井兄弟とマスターの牛田礼二(うしだれいじ)の三人きりである。  そして。  兄も礼二も、雅煕のパリでの恋に、興味津々であった。   「ほんで、ほんで? んで、どうやって童貞喪失まで持ち込んだん? お金あげるから一発ヤらせろとか?」 「兄ちゃん、それはただの買春やん。そんなことせえへんわ!」 「雅ちゃん、眼鏡の選択間違(まちご)うてる以外は、男前やし、案外、向こうから迫ってきたんやないのぉ?」  マスターの礼二は、髪をオールバックにしてあご髭を生やしたいかつい外見のくせに、喋り方がオネエなのである。――礼二はこのビルのオーナーの息子で、兄・幸煕の同級生。この店の儲けは礼二の小遣いなので、経営は要するに趣味である。  
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