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「警察行って大使館に行って、パスポートの再発行を申請した。無理難題言われて、俺んとこ電話してきたんやな」
幸煕が確認し、雅煕がうなずく。
「そうや。兄ちゃんから圧力かけてもろうて、おかげでパスポート申請がやっと通った。それから、俺の泊まってるホテルに戻ったら、たまたま中国人の団体で満室やってん。俺の部屋はツインやったから……」
「なるほど、そうやって引きずり込んだんか!」
「人聞きの悪い言い方やめてんか?」
雅煕がシャンパンを一口飲む。――ヴーヴ・クリコのヴィンテージ。ピノ・ノワール種の華やかでコクのある味わいが口の中に広がる。
雅煕はため息をつき、少し考えて説明した。
「……彼女、割と律儀なタイプで……お礼もなんもできへんの心苦しいって言うてさ……お礼に処女をもらってくれって言い出したから……」
「うっひょう!」
「ちょっと何それ! 処女の恩返し? 日本昔話にそんなのあったわね!」
オネエ言葉で驚く礼二に、幸煕が悪乗りする。
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