22、祖父と祖母の因縁

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 雅煕もグラスを空け、そこに新しく注がれたのをゴクリと飲み下す。以前の婚約の件を思い出すだけで、胃がキリキリしてくる。     「あれから六年、婚約者候補は何人か上がったけど、お前がごみクズ文書研究に邁進(まいしん)して女に興味失くしてたさかい、全部立ち消えになってたんや。そこへきて、卒業間際に女とパリで五泊! 帰りの飛行機まで羽田経由に変更して。こら、枯れ果てたお前にもついに春が来たと、色めきたつやんか。……そしたら空港でサヨナラされて、以後一切連絡無しって、どういうことや!」  ダンッ! とカウンターを叩いて兄に詰め寄られて、雅煕がビクッと身を縮こませる。 「そんなこと言うたかて……処女喰うたんがあっちのおばあちゃんにバレて、俺、めっちゃ叱られてん。それに彼女も、俺みたいな無職のオタクと付き合う気はないみたいやし……」  突っ返された左腕の時計をいじりながらウジウジと言えば、幸煕が呆れたように天井を仰ぐ。  タコのアヒージョにクラッカーを添えたものを二人の前に置きながら、礼二が言う。
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