2、ダサ眼鏡桜井

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「盗難届もだけど、まずはスマホの位置情報を探知しろってさ」  桜井はそう言いながら、署内のWiFiのパスワードを素早く打ち込んでいく。桜井の大きな手は男性にしては色白で、長い指が滑らかに動く様子に、杏樹の目が釘付けになる。 「ここにIDを入れて」 「は、はい……えっと……」  なんとかヨロヨロとIDを入力すると、位置情報がわかった。桜井が表示された地図を警官に示せば、彼が画面を覗き込み、周囲の警官たちに指示を飛ばす。 「今ここに君のスマホがあるということは、犯人もここにいる可能性があるってことやから、今から警官が向かってくれるそうや。もしかしたら捨てられてるのかもしれへんけど。とりあえず不正使用されへんように、端末をロックする」  桜井の指示通りにパスワードを設定して端末ロックをかけ、杏樹は少しだけホッとする。 「盗られてからそれほど経ってへんから、大丈夫とは思うけど――もし、戻ってこうへんかった場合は、全データを削除して日本帰ってから、契約し直しになんのかな。僕もその辺はよう知らん。あとは……そうや、クレカや。クレカを大至急止めなあかん」
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