22、祖父と祖母の因縁

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 ゴンッとカウンターに頭をぶつけ、そのまま突っ伏している雅煕に、幸煕が衝撃的な事実を告げる。 「北川苑子は、五十年前に、おじい様との縁談を蹴ってフランスに逃げた女や」 「えええ?」 「ウソぉ!」  雅煕と礼二が同時に叫んだ。 「北川興産も高度経済成長期でイケイケやったし、美人女優・喜多川マリの母親だけあって、北川苑子もかなりの美女やったんやろな。ところが正式に婚約する前に、苑子はフランスに逃げてしもうたんや」  「……そんなに嫌われてたん、おじい様……?」     正式な婚約前であったため、和泉家側は事を荒立てず、祖父は別の女性と結婚した。一方、北川苑子はフランスで二十歳年上の妻子持ちの有名画家と恋に落ち、娘を産む。画家が亡くなって、幼い娘を連れて苑子が帰国した時には、上流社会はちょっとした騒ぎになったという。 「和泉家側としては、北川家に特に遺恨はないねん。ただ、北川家の方は気まずいものがあるんかもしれん」 「でも……たぶんそんなのは関係なく、俺は苑子おばあちゃんに拒絶の二十万円を突きつけられてるわけで……」 
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