23、皐月の茶会

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 筆頭の大貫老人が、鶴のように痩せた身体を折り曲げ、五人が一斉に畳に頭を擦り付けて平伏する。雅煕は発言も、頭を下げることも許されていないので、そのまま座っているだけだ。うち一人は自分の父親であるから、なおさら複雑である。   「若様はおいくつにおなり遊ばしましたか」  二番目の石川が尋ねる。雅煕は発言を許されていないので黙っていると、祖父が尋ねた。 「いくつやったかな」 「……二十八です」 「そろそろご結婚して、次の次の四郎左衛門様を儲けていただかねばなりませんな」 「いや、まったく」  「そうやそうや」   四番目の桜井以外が言い合うのを、雅煕が顔を引きつらせて聞いていると、祖父が言った。 「それはまあ、おいおいや。結婚を焦らせたらロクなことにならへん」  すると末席の澤田が言う。 「せやせや、六年前の二の舞は困りますわ。あの阿婆擦(あばず)れ、山内の兄さんの紹介やと思うたけど違いますか? やっぱり、メーカーと政治家の癒着は害悪しか生みしまへんなあ」 「何を! あれは……まさかあんな阿婆擦れとは思いもよらず……」 「まあまあ!」
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