2、ダサ眼鏡桜井

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 海外でクレジットカードを盗難された場合の専用の番号(ナンバー)を素早く検索し、自分のスマホを出して番号を打ち込む。日本語のコールセンターに繋がった状態でスマホを渡され、杏樹はただ、コールセンターの指示通りにカード無効化の手続きを取る。――これも杏樹一人だったら、絶対に思いつかなくて、ぼーっとしていただろう。自分の至らなさが情けなくなってきて、杏樹はスマホを桜井に返して、詫びた。 「本当にすみません。全部、やってもらって……わたし、全然ダメだ……」  いろんなショックで涙腺が脆くなって、視界が滲んでくる。――だめ、泣いてる場合じゃないのに。  その様子を見た桜井が、俯いてしまった杏樹の顔を覗き込むようにして言った。 「そら、外国で財布もスマホも取られたら、僕かて頭真っ白になるわ。僕が今、冷静にあれこれできんのは、所詮は他人事やからや。自分のカバン盗られたら、今ごろパニクってる。……もうちょっとやから頑張って、できることはしてしまおう。な?」 「はい……ありがとうございます……」        グスッと鼻をすすりながら、杏樹は頷く。  
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