24、五十二年ぶりの再会

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24、五十二年ぶりの再会

 初座(しょざ)の時刻が迫り、北川苑子は茶室の外の腰掛けに座って待つ。礼法通り、亭主の四郎左衛門が手桶を持って露地に出て、手桶の水で(つくばい)を清める。それから、腰掛けに待つ苑子の方にやってきた。  五十二年前、二十三歳と二十六歳だった二人は、今、七十を越えて再会した。  ――あらまあ、年を取ったこと!  若く美しかった青年は、白髪で貫禄のある老人となっていた。礼法通り無言で挨拶を交わし、苑子は蹲で手を清めて、躙り口から茶室に入った。    床の間には書がかかり、香合と、苑子が貸した花入れに藤が活けられて、諸飾りとなっていた。掛物を拝見していると、亭主の四郎左衛門が入ってきて、苑子の前に正座した。 「このたびは遠いところをわざわざ、およびたていたしまして」 「いえ、こちらこそ――」  さきほど、スマホに記憶してある番号にかければ、サクライもまた、この会場にいることを認めた。つまり、サクライは桜井由美子の息子であり、四郎左衛門の外孫なのだ。  苑子は偶然のめぐり合わせに驚嘆するとともに、気づかずに、のこのこと敵陣におびき出された気分で、つい、舌打ちしそうになる。
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