24、五十二年ぶりの再会

5/7
前へ
/337ページ
次へ
「いえいえ、こちらとしても、孫娘の窮地を助けていただいたわけでございますから、改めてお礼を申し上げます」  ほぼ食べ終えた折敷を脇にのけ、苑子も畳に手をついて頭を下げる。   「つきましては、お嬢様のお気持ち次第やとは思いますが、お嬢様を息子の嫁に頂戴でけへんかと――」 「はあ?」  思わず聞き返してしまう。 「息子――雅煕は、秋には和泉家本家に養子に入り、十七代目の四郎左衛門を継ぐことが決まっております。正式な披露目は秋の茶会を予定しておりますさかい、今はまだ内々のことではありますが……」 「ええ? 杏樹を、和泉家の、四郎左衛門の嫁に? まさか! だって、杏樹はあたくしの孫ですわよ! 本気ですの?」   苑子が桜井と、そして四郎左衛門を交互に見て驚愕する。 「北川家のご令嬢であれば外野も文句ないと――」 「ないわけないでしょ! あたくしはあなたを袖にして逃げた女ですわよ! その孫を! それも外国人の血が入っていて、父親はクズ男で有名な映画監督、母親はスキャンダル女優。どう考えても和泉家のお内儀(ないぎ)様にはふさわしくな――」  言いかける苑子を、四郎左衛門が遮った。  
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2331人が本棚に入れています
本棚に追加