24、五十二年ぶりの再会

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「和泉家の嫁は、和泉家の当主が選んだ者。条件はそれだけや。国籍も血筋も、関係あらへん。雅煕がそちらのお嬢さんを好いとる。お嬢さんさえ頷いてくれるなら、なんも問題はあらしまへん」 「……うちの杏樹はその……学校の成績もお世辞にもいいとは言えません。とてもじゃないけど、和泉家のお内儀が務まるとは思えません」   苑子は杏樹の成績を思い浮かべる。――地頭が悪いわけではないと思うが、勉強が好きな娘ではなかった。   「雅煕は、学校の成績はとてもよくて、賢い子でした。でも――」 「和泉の四郎左衛門には、頭の良さも商才も必要ないんや」     由美子が運んできた熱燗の酒器を持ち、亭主が立ち上がって苑子の前に座って、その酒杯に注ぐ。――主客が酒を酌み交わす千鳥の盃。苑子が飲み干して、盃を四郎左衛門に渡し、苑子が酒器を取って返杯する。それを飲みほして、四郎左衛門が言った。 「四郎左衛門はグループのお神輿。羽毛のように軽くて欲のない男でないと、務まらへん。いうなれば、見えない鳥籠に飼われる鳥みたいな、そんな暮らしや。……あんたは、それに気づいて逃げた。見えない鳥籠に捕まる前に、自分一人、わしを置いて」
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