25、断れない縁談

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 和風建築の離れと異なり、母屋は洋館造りだ。ホールのところで、ちょうど二階から降りてきた美奈子と鉢合わせる。これから夜遊びにでも行くのか、肩だしカットソーにデニムのショートパンツという、韓流アイドルみたいな格好だ。  ――今年から北川興産の関連企業に就職したはずだけど、まともに働く気はないらしい。 「あら、あんたがこっちに来るなんて、珍しいわね」 「叔父様が用事があるっておっしゃるから」  来たくて来たわけじゃない、という気持ちを込めて言えば、美奈子は肩だしカットソーから出た肩をすくめて笑った。 「あんた、あのダサ眼鏡にも振られたんですって? マジうける!」 「ほっといて」   普段は何を言われても気にならないが、雅煕のことを揶揄われると多少、堪えるものがある。美奈子に構っている暇はないので、杏樹は慌てて女中の後を追いかけた。 「杏樹お嬢様をお連れしました」
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