25、断れない縁談

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 北川家との縁を結びたいなら、杏樹じゃなくて、現当主の孫である美奈子に行くべきだ。年だって美奈子の方が上だし。  勝之が頷く。 「杏樹に、という指名だ。北川家の娘なら誰でもいい、ということではない」  「……はあ……」 「相手は、和泉財閥の御曹司だ。重々、人に漏らすなよ。北川興産とは比較にならないほどの大きな財閥なんだ」 「え? そんなすごい人とわたし? ええ? なんで?」  和泉財閥の御曹司がどこでどう、杏樹を見初めたのかさっぱりわからない。そんな大それた相手からの縁談に、杏樹は混乱してしまった。 「とにかく、向こうは杏樹を指名しておる。家の格もレベルも段違い過ぎて断れない。ここは諦めて嫁に行ってもらうしかない」  「え、ちょっと待ってください、そんな突然言われても」 「わしらも混乱しとるんじゃ!」  真一郎がヤケクソ気味に言う。 「もう、うちにはそんな話は来ないと思うとったのに! だが今度ばかりは逃げるわけにもいかん! 二度目のお目こぼしなど、期待できん!」 「二度目のお目こぼし?」  わけがわからず首を傾げれば、真一郎が目をカッと見開き、唾を飛ばして力説する。
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