26、祖母の過去

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「あたくしは了承したつもりはないけど……それにしても昨日のうちに、真一郎に話を持ってくるなんて、あちらもずいぶんと動きが早いのね。それだけ切羽詰まっているのかしら」  首をかしげる祖母に、杏樹がさらに尋ねる。 「叔父さんたち、もし断ったら北川興産が潰されるって――」 「まさか! ヤクザじゃあるまいし」  着物の半襟を外しながら、祖母が呆れたように言う。 「で、でも……前の婚約者のおうちはお爺さんが失脚して、会社は潰れる寸前までいったって!」 「前の婚約者……」 「有賀電機?」 「あー、あの時の!」  祖母がポンと手を打つ。 「じゃあ、彼はあの時の――あの騒動は、わたくしも内情は知らないわ。でも、有賀家側が相当に不義理を働いたんじゃないかしら」 「そうなの……?」  祖母が笑った。
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