2、ダサ眼鏡桜井

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 杏樹が時計と桜井の顔を見比べている間、桜井は杏樹のスーツケースと、杏樹のすりむいて破れた膝を見比べていた。   「先にホテルに荷物置いて、着替えた方がええんちゃう? どこに泊まる予定やってん?」  尋ねられて、杏樹はあっと思う。    「えーと、宿は予約してなくて――の家に泊めてもらうつもりだったんです。でも……」 「ってのはつまり――」  杏樹はどこまで説明していいかわからず、視線を泳がせる。 「その……他に、女が――」  朝の情景を思い出して杏樹の目にジワリと涙が溢れ、桜井が何かを察して気まずそうに視線を逸らす。そして頭を掻きながら言った。 「うーん……それやったら、僕の泊まってるホテルに行ってみる? お金もパスポートもない状態では、一人ではどうしょうもないやろ? お金は僕が貸すし」 「そ、そこまで甘えるわけには……」    さすがに遠慮する杏樹に、桜井が言う。
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