26、祖母の過去

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「……あの人は、鳥籠に入る予定の孫に、伴侶を見つけてあげたいと思ってるのね」 「……それが、わたし?」  いったいなぜ? たまたま、祖母の孫だから? 「和泉家の当主夫人はお内儀様と呼ばれて、かつてはその座を巡って、陰惨な争いも起きたらしいわ。だから嫁とりは慎重にも慎重を重ね、正式に決まるまではよそに漏れないように細心の注意を払うの。縁談があった形跡すら残さないように、釣り書きも写真もないのよ。正式に婚約していたのに破談になった有賀家は、報復されても仕方がないレベルのことをやらかしたとしか思えないわ」  杏樹は目をパシパシと瞬いた。釣り書きも写真も無し――ということは、相手の名前も顔をもわからないままってこと?   「今回のことは、あたくしもちょっと予想外だったわ。まさかあの家が杏樹を嫁に欲しがるなんてねえ……」 「……おばあちゃまは、その話を受けた方がいいと思ってるの?」  祖母が不思議そうに杏樹を見た。 「まあ、そうねえ……あたくしの目から見て、あの男は今一つ信用ならないけど……まあでも、結婚すると言うなら、条件は悪くないわ。何しろ天下の和泉家、お金は腐るほどある家だし」
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