27、追い詰められる

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27、追い詰められる

 突然の縁談のお相手は、大財閥の御曹司。  現代のシンデレラと浮かれるほど、杏樹ももう、子供ではない。 (まだIT長者の方が、現実味があるわ……昔、自分を捨てた女の孫を、己れの孫の嫁にって、どうなのよ……)  そこまで祖母に執着するなら、孫同士なんてまどろっこしいことせず、祖母と結婚すればいいのに!     さらに不可解なのは、こんな無茶苦茶な縁談を「杏樹が了承するなら」と、祖母が了解したことだ。どう考えても、あり得ない。  一番信頼する祖母にまで裏切られ、杏樹は絶望する。    縁談を断っても、祖母は報復などないと言う。一方で報復を恐れる母屋の大叔父たちは、首に縄をつけてでも杏樹を嫁がせる気でいる。 (どうしよう、どうしたらいいの――!)    杏樹の焦燥を嘲笑うように、物事はどんどん進められていく。  その週の土曜には、呉服屋が大量の反物を抱えてやってきた。   「おばあちゃま、何、これ、どうしたの」 「何って杏樹。お前の振袖を大急ぎで仕立てないといけないから」 「振袖? 振袖なら成人式のがあるじゃない!」
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