27、追い詰められる

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 ノリノリで反物を物色し始めた姿に、口では「断ってもいい」なんて言いながら、実は祖母が一番張り切っている事実を突きつけられ、杏樹の絶望が深まる。   「え、ちょ、ちょっと待ってよ、おばあちゃま、わたしはまだ――」 「やはり柄は古典がいいかしら。現代風の柄も悪くはないけれど。杏樹、ちょっとこれ、肩にかけてみてちょうだい」  完全に無視されてしまい、もう味方はいないと杏樹は悟った。 「見合いは七月の最初の週と決まった。ちょうど、ウチの美術館の展示替えの休業期間だ。その間に茶室で茶事をすることで話がついた」      六月に入ってすぐ、母屋に呼び出されて大叔父に告げられ、杏樹は絶句する。    「え……で、でもおばあちゃまは嫌なら断っていいって――」 「ありえんわ! お前の我が侭で北川家を潰す気か!?」  大叔父に怒鳴りつけられ、杏樹がビクリと身を縮こませる。  
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