27、追い詰められる

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「……それって女が浮気したってこと?」 「だって、マザコンでインポなのよ? そんな男、浮気されて当然じゃない!」  美奈子の論理が理解できずに首をかしげている杏樹に、美奈子がさらに喚きたてる。 「なのに、和泉グループ内の企業が突然、有賀電機の株を叩き売って、会社が潰れそうになったうえに、次期総理の椅子は確実って言われてたおじい様は、五年も前の賄賂をマスコミに暴かれて失脚したのよ。ひどいわよね? あんたみたいなどん臭い女にはピッタリの陰険野郎だわ」  そんなことを言われても、杏樹がその御曹司について知っているのは和泉、という苗字だけだ。同調も否定もできずに戸惑っていると、美奈子が嘲笑するように言った。 「そういや、あんた、パリでもダサ眼鏡に色目使ってたもんね。ダサい男が好きならお似合いじゃないの? おじい様が言うように、せいぜいその胸で誑かして、媚びを売ればいいんだわ!」 「胸、胸ってなによ! 放っといて!」  杏樹は半泣きになって母屋を飛び出した。背後に美奈子の高笑いが響き渡る――          
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