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3、オテル・ド・ロンシャン
桜井が宿泊しているホテルは、地下鉄のトロカデロ駅の近く、ロンシャン通りを少し入った三ツ星ホテルだった。トロカデロと言えば、対岸のエッフェル塔を眺めるロケーションが人気のスポットだが、このホテルからだと、エッフェル塔観光にはかなり距離がある。
「観光には微妙な立地やねんけど、その分、値段の割に広いねん。――僕は一週間以上滞在するから、バスタブがないとキツイさかい」
三ツ星でバスタブがあるのが魅力、と桜井が笑う。健司のところに泊まることしか考えてなくて、ホテルのことなんてまったく気にしていなかった杏樹は、へえと思いながら、ホテルの外観を見上げた。
「かなり長く滞在されるんですね？ お仕事？」
それにしてはヒマそうだなと、杏樹が桜井を見上げれば、桜井が「うーん」と首を傾げる。
「仕事と言えば仕事？ 資料調査と学会に来てる。ここが学会会場に一番近いホテルなんよ」
「ガッカイ……もしかして、大学の先生なんですか？」
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