29、ダサ眼鏡の若様

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「わ、わかりました!」 (……そもそも、若様が何者かもわからへんのに、誰に漏らすっちゅーねん!)          小半時ほどして、ドアボーイからの報せを受け、支配人は「若様がご到着に……」と呟いて、タイを直しながらいそいそとロビーに向かう。 (……若様、って何者なん? 社長のお嬢さんかて、姫様なんて呼ばへんのに、いったい、何事?)  小川は好奇心に負けて、奥のオフィスから出てフロントの向こうを覗く。  支配人がやけにぺこぺこしているのは、背の高い黒縁眼鏡のスーツの若い男と、その連れらしい女子大生風の若い女性。  少し怯えたような女性の、ほっそりした肩を抱き寄せてエレベーターに消えていく男が、若様に違いない。 「……あれが、若様? 眼鏡ダッサ……」
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