31、盗聴大作戦

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「確かに、女とヤるときは俺のホテルにしろ、とはゆーた。チンケなラブホなんか行って、盗撮されてマスコミに写真や動画が流出したら大事(オオゴト)やからな。『和泉グループ御曹司、ベッドの上のご乱行!』なんて記事、目も当てられへん。だがなー今はまずいぞ? 相手の()の名前はわからへんのか」 「……はい」 「防犯カメラの写真は?」 「少々お待ちください、今すぐに……」  支配人がオフィスに走る後姿を見送り、晴久は甥の雅煕のことを思う。ちょうど二十歳違いの、和泉本家を継ぐはずの甥。晴久は要は、雅煕の保護者であると同時に、監視者でもあった。  現在、当主・四郎左衛門の意向で、北川興産の創業者一族のご令嬢との、婚約に向けての話し合いが秘密裡に進んでいた。来月頭に東京で顔見せという名の見合いに持ち込み、めでたく婚約――という青写真であったが……。 「この時期に京都で女と密会するか……?」 
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