31、盗聴大作戦

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「女が? ……そもそも、今日初めて、突然来たんやな……?」  晴久が顎に手を当てて考え込む。 「とりあえず、女の正体を知りたい。……飯はどうするか聞いてるか?」 「いえ、何も……」 「ヤることだけヤって、飯も奢らずなんてことだけは、桜井の男ならせえへん。家訓に反する。上手いこと、十七階のレストランの個室に誘導して、そこにマイク仕掛けとけ」 「マ……マイクですか? でもそれは盗聴……」 「身内のことや! エッチを盗聴するわけやないねんから! つべこべ言わずに早くせい!……あと、俺が来てんのは知ってんのか?」 「社長にご注進に及んでも構わないが、邪魔はするなとおっしゃいました」 「なら、俺のことは黙っとけ」     こうして、晴久社長命令により、十七階スカイラウンジの日本料理店の個室に小型マイクが設置された。            夕方六時過ぎ、ジュニア・スイートからフロントに電話が入る。 「支配人・東郷でございます」 『僕やけど。ご飯食べに行きたいけど、生憎雨やから館内のどこかにするわ。二階の日本料理店を予約――』
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