31、盗聴大作戦

7/7
前へ
/337ページ
次へ
 女の正体に気づいて、晴久は拍子抜けする。  ――なんや、なら別に問題ないやん。……ほんなら、盗み聞きの必要もないな、とイヤホンを引っこ抜こうとした、その時。 『なんか、叔父さんたちが言うには、絶対に逆らえないし断れない縁談だからって……だから……最後に、雅煕さんに逢って、抱いてもらって諦めようと――』  なんやて――?  外しかけたイヤホンを慌てて押し込み、晴久がガバリと起き上がる。 「社長?」  支配人が心配そうにオロオロするが、晴久の心の修羅場はそれどころではない。     ――おいおいおいおい、何言うとんねん、諦めるってなんやねん! そいつや。お前の結婚相手は、目の前のそいつやって。    北川家の令嬢が、とんでもない誤解をしていることに気づいて、晴久はしばらく虚空見つめてまばたきを繰り返した。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2331人が本棚に入れています
本棚に追加