32、大きな勘違い

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 本当の結婚相手は目の前の男なのに、知らない男と結婚させられると絶望に囚われている二人は、真実を知っている晴久にしたら滑稽である。しかし、思い込みの激しい二人だったら、心中しかねない。   『俺のおじい様に言って、縁談を潰してもら――』   『ダメよそんなの! すごい陰険な御曹司らしいから、その相手! 雅煕さんのおうちに迷惑かかっちゃう! 前の婚約者と破談になったら、婚約者の実家が潰されそうになったとか、政治家のおじい様が失脚させられたとかで、大叔父様がすっかり怯えてしまって』 『……ちょっと待って、その話、めっちゃどっかで聞いたことあるんやけど、それってもしかして』  雅煕が、さすがに話の類似に気づいたらしい。――そうや、もしかせんでもそれはお前のことや! 気づけ、気づけ雅煕!  支配人室からテレパシーで念を送るが、エスパーではない晴久の思念が届くことはなかった。   『有名な話なのかな? 婚約者の人、美奈ちゃんの先輩なの。美奈ちゃんが言うには、マザコンでインポだから振られてもしょうがないんだって。わたしは浮気した元の婚約者の方が悪いと思うんだけどね。雅煕さんのお知り合い?』
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