33、諦めきれない男

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 雅煕はスマホをベッドサイドのチェストに置き、頭を抱える。    縁談があるってことは、つまり、杏樹は他の男と結婚する。結婚するってことは、つまり――    ――杏樹が、俺以外の男と、あんなことや、こんなことや、そんなことを――    まだ見ぬ謎の男に犯される杏樹の姿を想像してしまい、雅煕の脳が嫉妬と欲望でぐちゃぐちゃになる。 「う……うう……」    両手で髪を搔きむしって身悶えていると、ちょうどシャワーから上がってきた杏樹が、びっくりして駆け寄ってきた。 「雅煕さん? どうかしたの?」  顔を上げれば、心配そうに覗き込んで身をかがめた杏樹の、はち切れそうなバスローブの胸元が目の前にあった。湯上りで上気した白い胸――。  雅煕の喉がゴクリと音を立てる。 「あ……杏樹……」    両手で強引に抱き寄せて胸に顔を埋めれば、柔らかな感触と石鹸の香りに、脳の奥が痺れ、欲望がさらに膨れ上がって爆発しそうだった。 「杏樹……俺のこと、好きなんやろ? 好きやから、会いに来てくれたんよな?」 「うん……大好き……変な眼鏡をしてても、外していても、どっちも好き……」
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