33、諦めきれない男

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 杏樹が雅煕の膝の上に乗り、ごわついた癖毛を繊細な指で梳き、頭を抱え込む。必然的に、豊かな胸に顔を押し付けられ、雅煕は柔らかな膨らみに唇を這わせた。  ――これは、俺のものや――  華奢な身体を両腕で閉じ込め、大きな掌でバスローブ越しに背中を撫でまわす。 「俺が好きなのに、なんで? 他の男と結婚するなんて、おかしいやん。結婚するってことは、俺以外の男とセックスするってことやで? そんなん、許せるわけない。杏樹は平気なん?」 「平気な、わけ……」  杏樹がぶんぶんと首を振る。 「平気なわけない! 絶対にいやだけど!……でも、叔父さんたちが……」 「杏樹は、俺のものや。俺も杏樹だけ。俺の童貞喰っておいて、今さら、俺とは結婚でけへんって天使(アンジュ)やなくて悪魔の所業やと思わへん? どう、責任取ってくれんの? 俺、もう杏樹以外では勃たへんかもしれへんのに」  悲痛に顔を歪ませ、憐れみを請いつつ詰れば、杏樹もまた唇を噛んで俯く。   「そんなこと……言われても……」
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