33、諦めきれない男

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「俺は、好きでもない女は抱けへん。杏樹以外は無理。杏樹に捨てられたら、もう一生、誰とも結婚でけへんわ。ギリシャのアトス(さん)に修行に行って、キリストの叡智(えいち)を極めて、子孫も残さずこの世から消えるしかないわ……」 「ギリシャのアトスさん? 誰? キリストのエッチ?」   アトス山はヤギの(メス)すら入れない女人禁制の修道院だが、もちろん、杏樹は初めて聞く名前だ。 「ごめんね、わたしバカだから雅煕さんの言ってること、半分もわからない」  謝る杏樹に、雅煕が胸に顔を埋めたままブルブルと首を振る。 「アトス山のこととかは知らんでええよ。それより、この俺が君に捧げる愛と絶望の深さを理解してくれさえすれば! 杏樹!」  そう言いながら、雅煕は杏樹をベッドに押し倒した。
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