34、これが最後なら*

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「でも、ごめんなさい……黙って、お嫁に行けばよかったのに……どうしても、最後に抱いてほしかったの。わたしが、我が侭だったね……」  シーツをかき寄せて胸を覆いながら、杏樹もベッドの上に起き上がる。 「そんなことない。逢いに来てくれて、嬉しかった。……たとえ、これが最後でも……せやから……」  雅煕が杏樹に向き直り、頬に手を当てて唇を塞ぐ。杏樹も雅煕の肩に両腕を回した。 「今夜は思いっきり抱きたい。一生忘れられへんくらい、杏樹に俺のことを刻みつけたい」 「もう……一生忘れないよ……雅煕さん……」  互いに互いを刻み込むように、二人は明け方近くまで肌を重ねた。
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