35、叔父と甥

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 叔父のホテルで女と泊まって、叔父の目を誤魔化せるとは思っていない。だが、女を連れ込むときは、俺のホテルにしろと言ったのは、叔父本人だ。――あれは十八で東京の大学に入ったとき。他のラブホテルのような場所では、盗撮の危険が排除できない。和泉本家の跡取りであるお前のスキャンダルは常に狙われているんだから、と。  拉致されるように十六階まで連れ戻される。さっきまで杏樹と過ごしていた部屋で、叔父と二人きりというのも、気まずい。しかも叔父は室内を物色し始め、ゴミ箱まで覗いている。 「ちょっとやめてんか、そんなとこ覗くの!」 「お前、若いとは言えヤリ過ぎやろ、腎虚(じんきょ)で死ぬぞ」 「うるさい!」  使用済みのゴムの数を数え始めた叔父に、さすがに雅煕がキレる。   「何の話なん……彼女が誰が気になってんなら――」   「北川杏樹。さっき遠目でやっと見たけど、めっちゃ可愛い子やな。しかも胸もでかい。澤田の兄さんが見たらデビューさせろと騒ぎそうや」  番頭家の一つ、澤田家は娯楽産業とマスメディアを管轄し、芸能界に顔が広い。
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