35、叔父と甥

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「めっちゃ痛がってたし、出血もあったから処女やった思うで。あれが演技やったら、もうそれは美人局(つつもたせ)やろ。翌朝には身ぐるみ剝がれて発見されてんで」 「はー! びっくりやな!」  晴久がもう一口ビールを飲み、雅煕も数口飲み下す。 「でも幸煕(ゆきひろ)の話によると、フラれたそうやないか」     「おばあちゃんにバレてん。んで大激怒。あっちで財布掏られた彼女に三百ユーロ貸してたから、俺その恩を言い立てて日本でも仲良くしてもらうつもりやったのに、空港まで迎えに来た秘書のおばちゃんに二十万入りの封筒押し付けられて、さようならよ」  晴久がビールを飲み干すと、グラスをテーブルに置いた。 「それを旦那様に愚痴ったんか?」 「おじい様には愚痴ってへんけど、兄貴に喋って親父にバレた。呼び出されて正直に話したら、封筒ごと寄越せ言われて、親父に預けた」  雅煕の説明に、晴久が納得する。 「皐月の茶会で、彼女のおばあちゃんを呼び出して、旦那様おん自ら話をつけてくれはった」        雅煕が目を見開く。 「ええ?」
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