35、叔父と甥

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「有賀家関係でアホが流した根も葉もない噂が、まだ生きてんのや。……あのころ、有賀の娘は、お前のことをほんまにインポやと信じてたみたいやしな」 「佐和子には()たへんかってん。あいつ浮気して妊娠したせいで焦ってたんやろな、一度、俺の上に馬乗りになって、自分で服脱ぎだしたことあったけど、まったく反応せぇへんかった」        雅煕のかつての婚約者、有賀佐和子は、雅煕の友人と関係を持って妊娠し、雅煕の子だと誤魔化そうとしたのだ。だが、不発に終わり、そうこうするうちに佐和子の妊娠が露見した。 「俺がインポやと思いこんでんのに、あくまで俺の子やと言い張るのが意味不明で頭悪かったな。さすがに托卵は困るわ」  和泉家の姻戚になることで、政界の影響力を増すこと目論んでいた佐和子の祖父が、雅煕を若造と見くびり、悪評を流して婚約が流れた損失を埋めようとした。それが、マスメディアを牛耳る和泉グループ番頭家・澤田の怒りを買ったのだ。グループ内企業も一斉に反応し、有賀電機の株を投げ売りして株価は大暴落。経営破綻寸前まで追い込んだ。  六年前の一件を思い出し、晴久も肩をすくめる。
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